相続により取得した財産(土地、建物、株式など)を、一定期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。この特例を利用することにより相続税額の一部を経費化し、譲渡所得を圧縮して所得税の負担を軽減することができます。
この特例を利用するには
①相続や遺贈により財産を取得した者であること
②その財産を取得した人に相続税が課税されていること
③その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限(10カ月)の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること(=相続開始の日から3年10カ月までの譲渡)
以上が要件となります。
取得費に加算する相続税額は以下のとおりです。
相続税額 × 譲渡した財産の額/相続税の課税価格+債務控除額
例えば下記の場合には、
(1)相続により取得した財産の額 100,000,000円
(2)(1)のうち譲渡した財産の額 25,000,000円
(3)債務・葬式費用等 30,000,000円
(4)相続税の課税価格 70,000,000円
(5)相続税額 8,000,000円
8,000,000円 × 25,000,000円/70,000,000円+30,000,000円 = 2,000,000円
取得費に加算する相続税額は、2,000,000円となります。
また上記の例で代償分割(例:長男が自宅を相続し、その代償として長男が次男に金銭を支払う等)があった場合には
(1)相続により取得した財産の額 100,000,000円
(2)(1)のうち譲渡した財産の額 25,000,000円
(3)債務・葬式費用等 30,000,000円
(4)支払代償金 40,000,000円
(5)相続税の課税価格 30,000,000円
(6)相続税額 4,000,000円
譲渡した財産の額は、代償金部分を控除するため
25,000,000円 - 40,000,000円 × 25,000,000円/100,000,000円 = 15,000,000円
となり取得費に加算する相続税額は下記のとおりです。
4,000,000円 × 15,000,000円/30,000,000円+30,000,000円 = 1,000,000円